現在国際情勢の中心となっているウクライナ情勢。これを受けてか韓国でも有事に備える声が多く上がっている。今回はウクライナと韓国の共通点などについて取り上げていきたいと思う。
・ウクライナ情勢と韓国大統領選
・ウクライナと韓国の3つの共通点
・第一の共通点
・第二の共通点
・第三の共通点
ウクライナ情勢と韓国大統領選
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部で政府軍との紛争を続ける親ロシア派武装勢力の占領地域の独立を一方的に承認した。さらに、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が「ウクライナ軍の攻撃を撃退するため」の支援をプーチン大統領に要請したのを受け、24日、ウクライナへの軍事侵攻を始めた。ウクライナ各地の軍事施設が空爆されたほか、首都キエフでも爆発音が聞こえている。ロシアがウクライナを攻撃する意図について論じることが、本稿の目的ではない。本稿の目的は、ウクライナがロシアの侵攻を許すことになった脆弱(ぜいじゃく)性は、現在の韓国が東アジアの中で置かれた現状、文在寅政権が北朝鮮や中国の善意を信じ、米韓同盟、日米豪印・クアッドの協力から距離を置く対応と共通するものがあり、韓国がウクライナの教訓から学ぶ必要性を考えることにある。ウクライナの状況が世界の平和と安全、世界経済に及ぼす影響は甚大であり、その影響を日本も受けることは避けられない。しかし、韓国が北朝鮮の攻撃を受ければ、その影響は日本に直接及ぶことになる。5月に韓国に誕生する新政権には、文政権によって脆弱となった国防体制を見直し、韓国の地政学的立ち位置を再度点検して、米韓同盟、日米韓協力体制を強化してもらいたいものである。
https://diamond.jp/articles/-/297427
この記事が書かれたのは2月26日であり、韓国大統領選の真っただ中で多くの人はイ・ジェミョン氏が次の大統領になると予想していたことは記憶に新しい。結果としてはイ氏が政治経験のないユン氏を批判する際に「ゼレンスキーのような素人を大統領にしたからこのような事になった」と言ったことがダメ押しとなり、ユン氏が晴れて次の大統領となったわけだが、もしこの一連の出来事が無かったらイ氏が大統領になっていた可能性が高い。また記事には新政権には脆弱になった国防体制を見直してほしいとある。しかしもしイ氏が大統領にでもなっていたら、ただでさえがら空きになっている国防がもっと悲惨な事になっていたことは明白だ。普通なら停戦中の隣国を抱えている以上、国防政策は選挙の争点になり続けるはずだが、韓国に関して言えばウクライナ情勢の悪化でようやく注目が集まっている。軍事境界線のすぐ近くに首都を置いているのにそこまで呑気でいられるあたり、日本以上に平和ボケしていそうだ。
ウクライナと 韓国との三つの共通点
ロシアの侵攻を許すことになったウクライナの脆弱性について、中央日報は一連の記事や解説で主に次の3点を指摘している。第1に、1991年の独立当時のウクライナは欧州でも最大規模の軍隊を保有していたにもかかわらず、2014年のロシアによるクリミア併合に至るまでの23年間に、核戦力を放棄し、通常戦力もその遺産を使い果たし、ほとんど役に立たない兵力保有国に成り下がっていた。それに加え、国の指導者はロシアの「善意」に期待し、国防意識を持たず、軍の運用面で訓練を怠ってきた。第2に、危機が発生した時に共に戦ってくれる同盟国を作っていなかった。欧米各国は現在、ロシアに対する外交交渉、貿易・経済制裁を強調しているが、軍隊を派遣し、ウクライナの防衛に直接かかわる意思は示していない。第3に、国内の混乱と不安定化が親ロシア派の武装勢力に活動の場を与え、ウクライナの国防力を弱体化させた。以上の3点について、韓国の置かれた状況も、ロシアの侵攻前のウクライナと似ている。ウクライナの脆弱性を研究することで、文政権の国防政策の弱点が明らかになるだろう。
https://diamond.jp/articles/-/297427
ウクライナ情勢の陰に隠れているが朝鮮半島の情勢は今も差し迫っている状況であり、中国は韓国を自陣営に取り込もうとしてあの手この手を使っている。また北朝鮮に至っては折からの経済制裁に加え新型コロナによるセルフ鎖国や相次ぐ自然災害によって甚大な被害を受けている。その上北朝鮮の有力なタニマチのロシアは経済制裁によって大ダメージを受けており、とてもじゃないけど助ける余裕などない。今後北朝鮮が自国の悲惨な経済状況を何とかするために、韓国に軍事侵攻する可能性は否定できないだろう。にもかかわらず先述したような呑気さを政治家も持っているあたり、韓国の闇を感じる。
第一の共通点
ウクライナがロシアの侵攻を受けた根本的要因は安全保障意識の欠如である。これについて中央日報は、国防研究院客員研究・予備役陸軍少将であるバン・ジョングァン氏の寄稿文を載せている。そのポイントは次の三つだ。第1に脅威の本質は、相手の「意図」ではなく「能力」だ。相手の「意図」はいつ変わるかわからない。ウクライナはロシアの「善意」を信じて脅威を認識してこなかった。第2に戦略的思考の重要性である。ウクライナの指導者は、NATO加盟で国防の問題を解決できると考えたのではないか。第3に、軍備に加え、それを運用する能力も重要である。これは長期間の体系的教育と実践的訓練を通じてのみ会得できる。これらの三つのポイントにおいて、果たして文政権の安保政策は大丈夫と言えるだろうか。
https://diamond.jp/articles/-/297427
ウクライナ軍はソ連から独立を果たした1991年当時は総兵力78万人、戦車6500台、装甲車両7000台、火砲7200門、航空機2000機を保有しており、ロシアに負けず劣らずの軍事力を誇っていた。ウクライナがここまでの軍事力を得ることが出来たのは、ソ連がウクライナを重視していて軍需産業を集中させていたことが理由である。しかしウクライナは財政難もあってか軍縮を始め、持っていた核兵器を放棄した。そのせいでクリミア半島を失った2014年時のレポートでは総兵力20万人のうち即時投入できる兵力は6000人、600機の航空機のうち使い物になるのは二桁という悲惨なありさまになった。
一方の韓国はどうだろうか。バン少将の指摘した「脅威となるのは意図ではなく能力」という点は歴代の太陽政策を皮肉っているといえる。北朝鮮の核開発は着々と進んでおり、アメリカにまで届く核ミサイルが完成するのは時間の問題だ。にもかかわらず文政権は北朝鮮のご機嫌を取ることばかり考えており、北の脅威に対して何の対策も練ってこなかった。二つ目の「戦略的思考の重要性」という点だが、文政権は北朝鮮の望みを聞き入れれば朝鮮半島は平和になると考えているフシが見られる。しかし北朝鮮にとっての韓国の利用価値は金ズルしかなく、経済協力の対価として言われていた軍縮は全く行われていない。まあ、韓国国内の一部の左派は南北統一を果たした際の軍事力を削ることになるので北朝鮮に対する軍縮協力に反対しているとのことだが、青瓦台の関係者の中にもそれ狙いの人物がいそうな気がしてならない。三つ目の「軍備の運用能力」だが、米韓合同軍事演習が過去3年間行われていないことから、能力が低くなっている事は確実だ。まあ、新型コロナの世界的なパンデミックなどという不運があった事は事実だが、3年間も行われていなければノウハウなどは当然断絶に等しい状況になっている事が想像できる。このような状況で北朝鮮が攻めてきたらまともな米韓の連携が出来るとは思えない。
第二の共通点
韓国の中央日報は、「危機のウクライナ、これが同盟のない憂い…北朝鮮と中国も注視」と題する記事を掲載している。ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、ロシアのプーチン大統領が前日に「平和維持」名目でウクライナのドンバス地域への軍の派遣を命令したことを「主権侵害」と糾弾し、西側パートナーに「確実な支援を待つ」と述べた。これに対し、西側パートナーである米国と西欧諸国は、軍事介入よりも外交と貿易・金融カードに言及しているだけである。多くのメディアはその理由について、米国や西欧諸国がウクライナと同盟国ではないからであると論じている。バイデン大統領は、ウクライナの主権と領土保全について「揺るぎない」支持を数回にわたり表明してきた。しかし、ウクライナの救済のために米軍を投入する意思は示していない。バイデン大統領が昨年、アフガニスタンから一方的に米軍を撤収させたことも想起する必要がある。
https://diamond.jp/articles/-/297427
もちろん韓国にはウクライナと違って米韓同盟が締結されており、もし韓国に有事が起こったら米軍は動くと規定されている。しかし忘れてはならないのが文大統領はこの米韓同盟を何度も蔑ろにする態度を示し続けていたことであり、そのせいで米国から不信感を抱かれている点だ。昨年の米韓首脳会談では、「韓国と米国は規範に基づく国際秩序を阻害、不安定または脅かす行為に反対する。我々は韓米同盟が国際的な役割を拡大することで重大な挑戦に対処できることを認識する」と共同声明を出したが、その後の韓国の動きを見れば完全に反故にされている。
第三の共通点
ウクライナがロシアの侵攻を受けるようになった背景には、国内政治の混乱と分裂のため、防衛力が弱体化していた点があることを見過ごしてはならない。そうした視点で見ると、現在の韓国大統領選挙をめぐる国内の分断、分裂は極めて深刻な状況である。文大統領は就任後ただちに積弊の清算を進め、保守派の排除、革新系の長期政権を目指す行動に出た。これによって保守と革新の対立は決定的なものになった。
https://diamond.jp/articles/-/297427
韓国国内はそれ以外にも若者と老人、男と女の対立が激しいことが知られているが、一番激しいのはやはり保革の対立だ。その対立は大統領選を終えてますます深まっており、ユン政権下ではその揺り戻しとして革新派の粛清が行われることが予想される。まあ、だからと言ってイ氏が大統領になっていたらユン氏を始めとする保守陣営に対する排除を進めていったのは容易に想像できるので、こればっかりは避けられない。国内の分断が激しくなってしまうのは民主主義国の宿命であり、独裁国家が付け入る大きな隙となるだろう。
今回は韓国とウクライナの共通点についてまとめた。
下記に纏めてある。
・ウクライナは軍縮によってロシアに付け込まれ、韓国は北への擦り寄りの一環で軍縮を行っている。
・ウクライナはその特殊な立ち位置故同盟国を持てず、韓国は同盟国のアメリカを蔑ろにしている。
・ウクライナは親露派とEU派で国民が分断され、韓国は親北派と親米派で粛清合戦をしている。
・韓国は停戦中にもかかわらず、安全保障に関する関心が薄い。
いかがだっただろうか?こうやって見てみると韓国はウクライナよりも相対的に恵まれているのだが、文政権下ではそのアドバンテージを悉く捨てていった。幸運な事に次は保守政権だが、文政権の負のレガシーを克服できるかは未知数だ。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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